現代は、ファッションでもジェンダーレスという言葉を耳にする、性差のない時代かもしれませんが、大正時代から変わらず日本の男服として定着しているのは、やはりスーツではないでしょうか。スーツを格好良く着ることは、男の特権でもありますよね。

そこで本日は、日本が誇る職人の手仕事と至高の素材を駆使し、失われつつある希有な技術を継承・アーカイブしていく【cantate】の作るスーツをご紹介いたします。

 


まずはジャケットから。2ボタン、シングルブレストの極めてオーソドックスなデザイン。各パーツは体のラインに沿うようにアイロンで立体成形し、胸にはバス芯を使い、袖を通すほどに体に馴染むように仕立てられています。着ていただくとそのフィット感と軽い着心地は、驚くほどです。

 

 


cantateのシグネチャーともいえる職人技が随所に見ることができます。「閂止め」もその一つ。これはポケットの端など、生地にテンションがかかり綻びやすい箇所を糸で縫い、補強する縫製技術です。既製服のほとんどは、この処理をミシンで行っていますが、cantateでは手縫いで行っています。内側の仕様にも「南京玉縁」、「揉玉」、「松葉閂」など、機械ではできない美しい手仕事が施されています。

 

 


袖裏には、裏地に使うのが勿体ないくらいの、最高級シルクと極細リネンのシアサッカーを使用しています。袖通しの良さも抜群です。

 

 


汗を多く掻く背中の裏地は、キュプラと吸湿性・放湿性の高いウールを混紡した生地を使い、前身頃と脇身頃の裏地はキュプラとコットンを混紡した生地を使うなど、場所により素材を使い分けています。さらに中央の裏地をワントーン濃くすることで、ジャケットを脱いだときに、アクセントとして見えることまでも考えられています。

 

 


続いてトラウザーズ。紳士がはくべきトラウザーズは、ジャストなものを選ぶか、サイドに付いた尾錠で調節するか、あるいはサスペンダーを使って欲しいというcantateの考えから、デザインはベルトレス仕様。シンプルなウエスト周りは、スーツスタイルにスタイリッシュな印象をもたらしてくれます。シルエットは太腿にややゆとりをもたせ、裾にかけて細くなるテーパードラインです。

 

 


縫製はオーダーメイドに見られる仕様になっています。ボタンフライでテング付きのクラシックなデザイン。本水牛ボタンを使い、股シックまで付いています。ポケットの割り玉縁は、ジャケット同様に美しい仕上げです。ウエスマンのつくりは、幅が均一ではなく、前後で差寸があります。腰にかけて幅広になっていますので、ウエスト上部でフィット感を高めてくれるだけでなく、背面のVスリットも美しく見せてくれます。サイドアジャスターも通常は直線的につくりますが、cantateでは曲線にすることで、サイドからヒップラインを優しく包みこむようになっています。パンツの内側のマーベルトも上部は地の目を通す生地の使い方で、下部はバイアス使いにして、フィット感と丈夫さを保てるように仕立てられています。

 

このような職人の手仕事や丁寧な仕立てはすべて、上質な生地の風合いを損なわないために行われています。そして、この生地もまた、日本の伝統的な機屋の高い技術により織り上げられたもの。


原料は、ウール100%のsuper140’sを使用しています。これは1キログラムから140キロメートルの長さの糸が作れるほど、細く高品質ということです。その原毛を織り上げた後、洗いを強くかけ、表面を起毛させるミルド加工を施しています。加工といっても水で洗うだけのもので、柔軟剤などの化学薬品は一切使用していません。それでも原料の良さと、織りの密度や経糸を撚る回数などの工夫により、一般的なウールと大きく異なる、とろとろとした素材感とピーチタッチの滑らかな風合いが生まれます。また、そのような風合いながらも打ち込みがしっかりしているので、常識的な着用頻度であれば、トラウザーズの膝が抜けることがないほどのハリも併せ持ちます。まさに秋冬のスーツ生地としては理想形に近い素材といえます。

 

 

cantate
D. Navy Jacket & Trousers
French.35 Collar Shirt (Suvin Gold)
ALDEN
#990 Cordovan Plain Toe / Barrie Last

 

至って不変で普遍的であるネイビーのスーツですが、日本が誇る職人の手仕事と至高の素材を駆使した最高のスーツでもあり、漂うムードは気品に溢れています。
長く愛用できるのはもちろんのこと、ビジネスからフォーマルまで、また特別な日の特別な服としても着用していただけます。

動きやすい合理的なパターンのものではなく、バストやヒップを強調させる色気の強いものとも異なり、極めてオーソドックスだからこそ、着る人の魅力や男の色気を最大限に引き出してくれるスーツ。男性なら持っておきたい一着ではないでしょうか。

デザインが凝っていたり、派手であったり、遊び心があるファッションではありませんが、こういったクラシックで格式のあるスタイルを楽しむことも、一つのお洒落だと思うのです。

また、多くの人がこのような洋服を嗜むことで、失われつつある日本の希有な技術を守ることができるのかもしれません。

ぜひ一度、袖を通しにいらしてくださいね^^

 

キヨハラ

 

Posted by:chikaramachi lab.

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